コラム

ワンオペ育児 無理ゼッタイ

短きピースフルデイズ(2ヶ月半)(第四話)





平和である。

どうしちゃったんだっちゅうくらい、平和である。

生後2ヶ月が経ち、むすこ中心の生活にはおぼろげながらリズムができてきた。

午前中はゴミ出し、洗濯、食器の片づけ。日によっては家族で近所の児童館へ。お昼ごはんを食べたらしばらく自由時間。Netflixでドラマを見たり近所のジムで汗を流したり。夕方から料理を開始して、18時過ぎに夕食。後片づけ、沐浴で1日は終了。はやければ20時にはリラックスタイム。

生後1ヶ月までは、1日あたりの自由時間は15分あるかないか。微々たる自由時間もむすこの泣きによって強制終了。育児“休暇”なんてウソだと思った。


しかし、そこから1ヶ月でこの余裕。わたしだけでなく、妻にもようやく最近余裕が訪れはじめた。「やっと続きが読めるようになった」と『ハリーポッターと謎のプリンス』を図書館で借りてきて感激している。聞けば、読み始めたのは高校生の頃という。おそらく育児は関係ない。

平和が訪れたわけ


とまれ、これだけ余裕が出てきたのにはいくつかの理由がある。

まず大きいのは、おっぱいの安定的供給である。
最初のころ妻のおっぱいは詰まり気味で、乳腺炎の可能性があると病院にも言われ、妻もかなり不安を抱いていた。

加えてむすこがうまく乳首を吸えず、でも量は確保する必要があったため搾乳して哺乳瓶で母乳を与えていた。それが1ヶ月を過ぎた頃から、母乳が詰まらなくなり、むすこもきちんと飲めるように。現在は搾乳をやめ、1日トータルの授乳時間・回数も減っている。


さらには、むすこが夜、4〜5時間まとまって寝るようになってきた。
それまではだいたい2〜3時間睡眠。夜中2時間ごとに起きておっぱいをあげていると、こちらも日中昼寝をしないとやってられない(最初はわたしもその都度起きていたが、生後1ヶ月が過ぎるころに音を上げ、寝室を別にしてもらった)。


むすこが夜寝てくれることで妻の睡眠時間も以前より確保でき、日中も昼寝なしで動けるようになった。

日々の慣れも大きい。
おっかなびっくり育児していた当初と違い、われわれもむすこのあやす方法を掴み出した。泣き始めると、横抱きして縦に少し揺らせば落ち着いてくれることが多い。それでも泣き止まない場合はたいていおっぱいだ。


また、「この“泣き”は甘えん坊やな」「今寝てたら夜なかなか寝つけないパターンやな」など、日々のさまざまなむすこデータを蓄積することで、彼の行動も予想できるように。先々のことを予測できたり対処法をあみ出せれば、精神的にも肉体的にも育児の疲労度が格段に減る。

加速度的に人間らしく


そうこうしているうちに、むすこには、新しい表情が現れはじめた。

明らかに笑顔が増えたのだ。これまでは、おっぱいを飲んだあとにニマーッと笑みを浮かべる程度のさりげない微笑だけであった。それが、こちらが彼の両足を持ってユサユサ動かしたり、お尻をこちょこちょしたり、手にポコポコ小さなパンチをしたりすると声を上げてキャッキャと笑うようになったのである。

「ああ」「ううー」などの喃語(なんご)も増え、話しかければ「うう」とうめき、「青!」とこちらが言うと「あお〜」と声をあげる。今の彼の発達段階では偶然の一致に過ぎないのだが、日に日に「人間らしさ」を増す姿に親は心を奪われている。

もちろん日々の平和は安定しているわけではない。これを書いているここ数日は、むすこの夜泣きが再燃してなかなか寝てくれぬ。妻もまた少しおっぱいが詰まり気味のようだ。

だが、おしなべて平穏な日々だ。むすこが「ヤー」と笑い、妻とわたしは笑みを交わす。ごはんを作り、お酒をちょっと飲み、ドラマの続きを見る。この時間が永遠に続いてほしいとさえ思う。

心静かな日々。それは、

今日で終わる。

明日から保育園見学がはじまるのだ。

「保活」である。ついにわれわれは、荒波に乗り出していく。


 
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