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第一次保活ウォー -保育園見学編- (第五話)

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近所の児童館は、保活戦争の最前線だった。

先日、何気なく家族で参加したスタイ(よだれかけ)作りのワークショップ。わたしの隣に座る女性が、口火を切った。

「この前、夫婦で保育園の見学行ったんですけど」

すかさず向かいの人が引き取る。「どうでした? 〇〇地区って保育園入りやすいって聞いたんですけど。わたし、△△に住んでるからもう、引っ越そうかと思ってて〜」
「□□あたりも保育園が充実してて良いって聞きますよね」

繰り広げられる情報合戦。すこし前に妻とむすこは授乳室へと消え、残されたわたしは針でスタイを縫うのに必死なふりをしつつ、耳をダンボにした。

自分たちが住む地域は保育園に入りやすいのか、どの保育園の評判がいいのかーー皆目見当がつかない。冷や汗がつたった。

残された時間は2ヶ月


いよいよ、保育園のことを考えなければいけない時期にきた。

むすこの入園希望タイミングは、来年(2020年)の4月。入園の申し込みは今年(2019年)11月末〜12月頭となる。

9月現在、残された時間はわずか2ヶ月あまり。今のうちに保育園の目星をつけておく必要がある。しかし、ネットで調べても公式HPはヒットするものの、口コミレベルの詳しい情報はほとんど出てこない。自分たちの足を使い、目で見るしかないのだ。

自宅から歩いて通える範囲にある保育園は8つ。それぞれ公立や私立、小規模保育園など形態が異なるので、とりあえずそのすべてを回ることにした。見学の申し込みは妻がやってくれ、ほとんど毎日のように見学の予定が入った。

これから怒涛の保活がはじまるんだな……武者震いしながらむすこを見やると、フンフンと鼻息を荒くしている。彼なりにも何か感じとっているのかもしれぬ。

「ここは、ないね」

見学は面白かった。

いくつか園を回ってわかったのは、園内の雰囲気、広さなど目で見てわかる特徴はもちろん、教育方針なども園によって相当内容が違ってくるということだ。

見学してもっとも「いいな」と思った園では、2歳以降、年齢が異なる子どもたちを同じグループで保育する「異年齢保育」を行なっていた。上の子は下の子たちの面倒を見ることで"年長さん”の自覚が芽生え、下の子たちは年長さんに頼もしさや憧れを抱く効果があるそうだ。

その園では、食事やお昼寝タイムをのぞいて基本的に1日のスケジュールが決まっておらず、子どもたちの自主性に任せている。小さいころは保育士さんがアシストするものの、年長になると子ども同士で議論し、何をするかを決めることもあるという。むすこを自由にのびのび育てたいわれわれにはぴったりだった。

対して「ここはちょっと…」と感じた園もある。

まず、案内してくれた職員さんにいかにも覇気がない。説明するのは入園後に何が必要になるかなどといった「側(ガワ)」の話ばかり。「どんなことをして、どんな子どもに育てたいか」という教育方針についての話はいっさいなかった。

さらに園内を見学していると、1歳児の保育室にテレビが置いてあった。部屋のど真ん中にあるので気になって「このテレビは使うんですか?」と尋ねてみた。

「はい……。使いますね」
「何に使うんですか?」
「まぁ、アニメを見たり、NHKを見たり……」

いかにも歯切れが悪い。見学した他の園でテレビを設置していたところはなかった。

「ここは、"ない”ね」

見学の帰りに、妻と顔を見合わせた。

夫婦で見学できる贅沢


妻と一緒に保育の現場を目で見て、「ここにしたい」と2人で納得して決められる。これは当たり前のようでいて、けっこう贅沢なことなのかもしれない。

なぜなら、見学はすべて平日なのだ。育休をとってなかったら見学に来ることすらできなかった。これだけでも、育休を取得した意味があると思う。

すべての見学が終わると、夫婦の間ではなんとなく希望順位が決まっていた。ただ、各1時間程度の見学で、そうそうわかるものでもない。

「もう少し見たいね」。妻の提案で、"2巡目”に入ることにした。一度見学をして良さそうだった園で、園児たちと同じ環境で保育を体験できる「体験保育」をしてみることにしたのだ。

見学が終わって、残された時間はあと1カ月。体験保育の予約を済ませると、スケジュールはかなり詰まってきた。

「がんばろうね」

寝返りを始めたむすこに呼びかけると、布団にダラダラよだれをたらしながら「あー」と喘いだ。

ラウンド2の始まりだ。